2020.10.04雪水清花

遊び心に限界はない 〜“花育”が開くクリエイティビティ〜

「好きなように生きたい」「自分らしくありたい」という言葉はあふれていますが、いざ、「自分が好きなようにやっていいよ」と言われてみると、何をどこからどうやったものか、案外動けない人が少なくないのではないでしょうか?

私たちは子供の頃から、「あれはダメ」「これはダメ」「こうしなさい」「ああしなさい」「みんなはこうしてる」「みんなと同じようにやりなさい」と、自分を縛り、いつも他人と比較するような姿勢を、散々刷り込まれてきています。
自分の行動にはすべて「正解」か「不正解」があり、周りから見て、いわゆる“正しいこと”ができない自分はダメなんだ、という強烈な思い込みが、誰の心の中にも無意識に形作られています。

こうしてだんだん頭も心も硬くなり、多くの人が、大人になればなるほど、「さあ、どうぞご自由に!」と言われた途端に、ポカンとしてどうしたらいいかわからず、戸惑ってしまうのです。

実はこれ、逢いことばで新たにメニューに加えた「花育セラピー」で、よく見られる光景なんです。
花育とは、自分の感性で好きなように花を飾ることを通じて、自らの創造性や遊び心を引き出していくプログラムです。情操教育の一環として、子供たちのために小学校などでも積極的に取り入れられているものですが、最近では、右脳的なクリエイティビティを発揮させていくために、企業の研修などでも取り入れられるケースが増えてきています。



「自分の感覚と感性で、好きなようにお花を飾ってみてください」と言われた人の反応はよく似ています。

「え。どうしたらいいんでしょう??」
「やり方がわからないんですけど……」
「うまくできるかどうかわからないんですけど……」

皆が最初に口にする戸惑いです。
「好きなようにやっていい」という許可を与えられると、面食らってしまうのです。

花を飾るとき、人はどうしても無意識に、「上手に見せなきゃいけない」とか、「どういう飾り方が正解なんだろう」などなど、頭でいろいろ考え始めます。
もちろん、上手に飾ることで得られる達成感や満足感も、とても素晴らしいものです。
でも、いつも正解を探して、上手にやらなきゃいけないという、自分を枠にはめる考え方ややり方を、いったん脇に置いてみることが、花育セラピーで大切なポイントなのです。
そこには正解も不正解もなく、誰からも採点されることはありません。どんな作品を作ってもいいわけです。それはまるで、大海原にポーンと放り出されたような自由の中で、自分の好きなように進んでごらん、というGOサインを与えられるようなものです。

最初は子供も大人もみんな戸惑います。しかし、ぎこちなく遠慮がちながらも花に触れる中で、花の色や形、香り、手触りを五感で感じ始めます。そして自分の感覚を頼りにしていくことで、だんだんと自分の中の規制が取り払われていきます。すると、自分でも予想もしなかったような“遊び心”や“創造性”がむくむくと顔を出してきます。自分を縛りつけるルールや「正解」から解き放たれた途端に、心は自由に動き出し、ワクワクした感覚を感じ始め、好きなように思いのままに花と遊び始めるのです。



このとき、その根底には“楽しむ”というエネルギーが流れ始めています。
そして、この楽しむエネルギーこそが、その人の本領や持ち味を最大限に発揮するための起爆剤なのです。いったん自分の中にそのエネルギーが流れ始めると、心はのびのびと動き始め、「これしかできない」「こうしなきゃいけない」という思い込みや制限から自分を解放し始めます。無意識に課していた規制から、心がどんどん自由になるのです。その自由や解放感は、隠れていた遊び心をどんどん引き出していきます。“遊ぶ”ことは、子供のクリエイティビティを引き出す最高の方法だと言われていますが、実は大人にとっても、自分の持ち味や創造性をあらゆる意味で開花させる、素晴らしい方法なのです。

私たちは、いつも「正しい」自分でいるために、“楽しむ”ことを随分おろそかにしています。おろそかにするどころか、無意識に“楽しむ”ことを「いけないこと」にすらしています。楽しむことは、努力したとか、何かを達成したとかの先に初めて許されるものであり、その条件がクリアされない限り、自分は楽しんだりしてはいけない、とすら思い込んでいます。

けれども真実は逆で、“楽しむ”ことを条件づけなしに自分に許してあげたとき、そしてその“楽しい”に、評価や判断を一切持ち込むことをしないとき、それはその人が進むべき道に向かうのを後押しする、膨大なエネルギーになります。

楽しむことは、力むことの対極です。
そこに流れるエネルギーは、喜びとくつろぎです。

楽しい! ワクワクする!
ただそのことを唯一の拠り所として物事に取り組むとき、人は圧倒的な調和とくつろぎの中で、自らの持ち味や本領を明るく顕現させていきます。それは、自分の限界をはるかに超えていく創造性の種であり、思いもよらない未知の景色に連れて行ってくれる、確かな羅針盤なのです。

季節は秋。色合いにも深みのある花々が美しい季節です。
遊び心を解き放つ逢いことばの花育セラピーで、自分の中に秘められた“楽しむ”エネルギーを開花させていきませんか。