窓辺の花
「逢いことば」には、入り口の扉の横に大きなガラス窓があります。
廊下に面したこの窓辺に、花を飾るのが私の楽しみのひとつです。
来てくださるお客様が、階段を上がって小さな踊り場を曲がった時に、最初に目に入るのが、この窓辺の花であったらいいなと願いながら、花を飾ります。
そして、近隣の方にも、階段を上り下りするたびに、季節の花々を楽しんでもらえたらいいなと、密かに思ったりしています。
西荻窪の素敵なお花屋さんで、その時々に心惹かれる花を選ぶのも、楽しい時間です。
暑さの厳しい夏は花にとっても過酷な季節ですが、花瓶の水をこまめに変えて、茎のぬめりを落として、花ができるだけ長く美しい姿でいられるように心がけます。
なので、店での毎朝の最初の仕事は、花のお世話です。
それぞれの花ごとに寿命も違ってくるので、ひとつの花瓶の中で命を全うした花のあとに、また新しい花を少しずつ足していくような、そんなローテーションになるのですが、花同士の思わぬ色の組み合わせがとても素敵に見えたりして、それもまた楽しい発見です。
生き生きとした新しい花と、少しずつ色褪せていく花とが織り交ざる花瓶の中に、新しい花ならではの鮮やかな生命感と、色褪せていく花ならではの静かな美しさとが混じり合い、ひとつひとつの花が、それぞれのペースで命を全うしていくことの気高さを、改めて感じさせられます。
表玄関での役割は終えたけれど、まだ命がしっかり根ざしている花には、「花の楽屋スペース」に移動してもらいます。
店の内装を手がけてくださった「ひぐらし古具店」さんが、台所の出窓に素敵なカーテンをつけてくださったのですが、このカーテンの裏の窓辺を、出番を待つ葉物の植物や、出番を終えた花たちに“くつろいでもらう”場所にしているのです。
「花の楽屋スペース」の植物の世話も、毎朝の大切な日課。
色褪せていく花が日々少しずつ力を抜いて、その命を終えていく様子には、なんとも言えない深い感謝を感じたりします。
花の恵みは、その美しさだけでなく、置かれた場所で与えられた命を全うする、その尊さにあるのかもしれないと、そんなことを教えられたりします。
秋に向けて少しずつ涼しさも感じられ、人も植物もほっと一息つける季節です。
これからまたどんな花が「逢いことば」に来てくれるだろうと、今から楽しみな今日この頃です。